人生は旅だというが、確かにそんな気もする。自分の体を機関車に喩えるならこの車窓は存外面白い”
星野源『いのちの車窓から』KADOKAWA ,2017
『いのちの車窓から』(星野源著、大和書房)の冒頭にはこう書かれています。
星野源の窓からみるこのできる私の人生はもっと彩や深みがあるものかもしれない。
そう思わせてもらえるような、エッセイです。
この本を選んだ理由
人生において転換期、不安を抱いている真っ只中であり、そんな日々から目を逸らすように手に取ったのが本書です。
同じように何かに苦しんでいたり、なかなか苦しみから抜け出せない、そんな方に読んでいただきたい作品となっております。
なんてことのない日常でさえ
本書では、細野晴臣さんや、鶴瓶師匠、新垣結衣さん等錚々たる人物とのエピソードが語られています。しかしそれだけでなく、普通の人だったら見落とすであろうごくごく普通の日常が、色鮮やかに描かれています。
“息を潜めてゆっくり時間をかけ、見つからないように行動するこの遊び方は、子供の頃初めてやったかくれんぼと同じようなドキドキと楽しさがある。そんな時間を過ごすのがとても好きだ。”
この章では大好きなゲームタイトルを夜から朝方にかけてまで夢中になって遊んだという話である。本当になんてことのない誰にでもあるような日常を心から楽しんでいるように描写し、はっきりととても好きだと言い切るのである。
世の中には成功を約束したビジネス書がごまんとある。大の大人がゲームをした話など失笑されかねないムードもある中、成功者であり多忙を極める筆者が素直にこの時間が好きと表現してくれる。
良いものを良いと言えるからこそ素晴らしい表現ができるのでしょうね。
私の車窓では無色にも見えるような、エッセイに書かないであろう日常も、星野源さんの車窓を通せばピンクにも色鮮やかな青にもなるのかもしれません。
そんな星野源の車窓が羨ましい。私の車窓は手垢がつき、黒ずんでいる状態なのかもしれません。
では星野源さんはどのような考えを基にその車窓が作られていったのか
そんなことが様々なエピソードを通して学ぶことができます。
まとめ
音楽家、俳優、文筆家として様々な土俵で表現し、
圧倒的な支持を得ている彼の哲学触れることができるこの本
日々の仕事の疲れやストレスで汚れつつある車窓を
軽快で心地よい活字で筆者の哲学を知ることで、綺麗に洗い流してくれる。そんな作品なのではないでしょうか。